過払金の無料診断電話をかけてみた

「クレジットカードをご利用の方は過払金があるかも知れません。過去10年間まで遡れます。無料診断致しますので今すぐお電話ください。」的な法律事務所のCMを見かけるたびに、僕もいつか診断して欲しいと思っていた。

 

と言うのも、僕は会社関係の支払いをほとんど個人のクレジットカードで行っているため、個人レベルで考えるとかなりの金額を毎月使っている。基本的には翌月にすっきりと全額返済する方針なのだが、経営的な判断から手元にキャッシュを残すためにあえてリボ払いにして返済額を制限することもある。

 

この10年間で合算すると結構な金額を利息として支払っているはずだ。

 

フリーダイヤルだし、相手はテレビCMを出している法律事務所だし、リスクは全くない。むしろ知らない世界を垣間見れて、なおかつ数千円、あわよくば数万円が返って来るかも知れない。←持ち前のプラス思考発動。

 

ということで、電話をかけてみた!

夏の終わりの小さな冒険の始まりである。

 

少しドキドキしながら発信ボタンを押すと、ツーコールくらいで感じの良い女性の声が聞こえた。後ろがざわざわしていたのでコールセンターに繋がったのは明らかだった。

 

まずいきなり「はい、〇〇法律事務所です。何を見てお電話しましたか?」と聞いて来たので「CMです。」と答えると「何の媒体ですか?」とまた聞くので「テレビです。」と答えた。

 

するとさらに「何の番組か覚えていますか?」と立て続けに聞いて来る。そこで気がついた。

 

いきなりアンケートが始まっているな。

 

いや、まぁ、無料で診断してもらう訳だし、あわよくばお小遣いをいただく訳だし、そのくらいはお付き合いしないといけないだろう。「覚えてないですけど何度か見ていて、最後に見たのは一昨日の夕方頃です。」と丁寧に答えると「分かりました。ありがとうございます。」と納得してくれた。

 

そもそも僕のイメージはこうだった。

 

1.電話に出た若手の弁護士に、電話越しに自分の名前とカード会社名を伝える。

2.さらに生年月日等々で本人確認が取れたら担当の人が何かしら巨大なデータベースから情報を調べ、「あぁ、過払金が〇〇円程ありますね」的なことを言われる。

3.そしてその後なんらかのやり取りによって手数料を引かれた金額が手元に返って来る。

 

CMで「すぐに過払金があるか分かります」って言っている訳だから、そのくらい圧倒的にスピーディなイメージだ。

 

だけど、実際は違ったよね。

 

ここからオペレーターの女性との戦いが幕を開ける。

 

「では診断に入ります。お名前とカード会社を教えてください。」と言われ(まぁ、ここまではほぼイメージ通り)、速やかに答えると続け様に「では、この10年間でキャッシングはしましたか?」と予期せぬ質問が飛んで来た。

 

 

いや、キャッシングは「ほとんど」した記憶がない。

 

全くのゼロではない。僕は財布に現金をほとんど持ち歩かない主義で、かつ銀行のカードも持ち歩いていないので、ごく稀にクレジットカードのキャッシングでコンビニのATMから現金を引き出さなければならない状況のときがある。しかし利息がつくのが嫌なので数日以内に返済する。

 

だから、「この10年間、キャッシングはほぼ使っていないですが、2万円とか3万円とかを数回引き出したことはあります。でも数日で返済しています。利息は数百円くらい付いてたかなと思います。ただ、一般的な買い物ではカードをかなり使っていて、10年間で利息を結構支払っていると思います。」と丁寧に伝えた。

 

確かに、そう伝えた。

 

するとコールセンターの女性は「そうですか、ショッピングでのクレジットカードの利用の場合は利息ではなく手数料という扱いなので、過払金の対象にはなりません。」と言った。

 

なんと!!!

 

そうだったのか!キャッシングのみが対象か。こちらの早とちりだった。それであれば僕に過払金なんて無いだろうと思い、電話を切ろうとしたら、

 

「診断結果が出ました。お客様の場合10万円から20万円程の過払金がある可能性があります。」

 

と言い出した。

 

はっ?

 

なんで?

 

心底そう思った。

 

 

「詳しくはお近くの営業所でご確認ください。お客様の場合千葉市在住ということで、1番近いのは東京の新宿本店ですね。」と言う。

 

いやいやいや、たかだか数回のキャッシングで10万円から20万円も過払金がある訳がない。そもそもそんなに利息を払っていない。利息を払いすぎたから「過払い」じゃないのか。

 

そこでコロナを盾にやんわりと新宿までは行けない旨を伝えると、「では千葉まで営業担当のものがお伺いします。いつがご都合良いですか?」と切り込んで来る。

 

おぉ・・・、これじゃ不動産投資会社のしつこい営業電話と同じじゃないか。

 

そこでもうさっさと電話を切ろうと思い「いやぁ、やっぱり結構です。」と言うと、

 

 

「えっ!?過払金が返って来るかも知れないチャンスを見過ごすんですか?」

 

と攻め込んで来た。

 

いやいやいや、もうここまで来ると胡散臭さが期待感を遥かに上回る。

 

僕は悟った。

 

この女性の使命は「電話して来た人をとにもかくにも営業担当に繋げる。」その1点のみであると。

 

その時点で電話を無理やりに切っても良かったのだが、僕のジャーナリズムに火が点いた。

 

「10年間で2、3万円のキャッシングを数回して利息を数百円払っただけなのに、なんで10万円から20万円もお金が返って来るんですか?どんな計算でそうなったんですか?普通に考えてありえないですよね?」と聞き返した。

 

するとカチンと来たのか、「いや、弊社の過去の統計からぁ、今お聞きしたお客様の状況を照らし合わせるとぉ、そういう計算になるんですよね。」と女性の言葉使いが少しずつギャルチックになって行く。

 

「そういうマニュアル通りの答えじゃなくて、今そちらでどんな計算式で10万円から20万円と導き出したかを知りたいんです。そもそもこの電話で僕の過払金の正確な金額は分からないんですか?このよく分からない流れで営業の人に会うのはなんだか怖いです。」と言うと、

 

「それは企業秘密ですので。って言うかぁ、逆に電話1本で過払金の金額とか個人的な情報が分かったらそっちの方が怖くないですか?」と言う。

 

いや、CMですぐに分かるって言ってたじゃん。

 

なんだ、この不毛なやり取り。何かを搾取される匂いがぷんぷんする。

 

もうこうなると昨夜「半沢直樹」を見て気持ちが盛り上がってしまっている僕は止まらない。

 

「僕になぜ10万円から20万円くらいが返って来るという診断結果が出たのか、もう1度ちゃんと説明してもらえますか。」と繰り返し追求したところ「うーん・・・、何が言いたいんですか。私の方ではこれ以上は対応出来兼ねます。」と向こうが突如白旗を降ったので、「ではもう結構です。」とそこで電話を切った。

 

結論として言えることはひとつ。

 

過払金の対象はキャッシングのみです。